タイトルマッチ

 
初出誌・野生時代 1984年3月号
 
発行:カドカワノベルズ 1984年6月25日
カバーイラスト:浅賀行雄
定価:693円
ISBN-10: 4047770019
 
発行:徳間文庫 1989年2月15日
解説:新保博久
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カバー装画:長尾みのる
定価:571円
ISBN-10: 4195686954
 
発行:講談社文庫 1993年12月15日
解説:茶木則雄
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カバー装画:長尾みのる
定価:620円
ISBN-10: 4061855433

著者のつぶやき

 競馬をネタに小説を書くのにいささか飽きてしまって(僕、飽きっぽいのです)、『あした天気にしておくれ』以来の〈誘拐モノ〉を書くことにしました。舞台はボクシングでした。
 競馬もそうだったのですが、ボクシングについても僕は全くの無知でした。相棒・徳山が一時期ボクシングジムに通い、プロを目指していたことがあって、やはりこの小説も相棒を取材して書くという形になりました。
 野生時代という月刊誌が創刊されたばかりで、角川書店はその雑誌に岡嶋の長篇を一挙掲載したいと言ってきたのです。掲載された『タイトルマッチ』を読んでくれた他社の編集者が、憤慨しながら僕たちに掲載誌を届けてきました。雑誌には大量の付箋が貼られ、凄まじい量の赤字が入れられていました。それがすべて誤字脱字だったことに、僕たちも仰天しました。それを野生時代の編集者に言うと、彼は「いや、この雑誌はゲラ代わりですから。単行本で直りますよ」と言い放ったのです。
 僕は呆れて言葉が出ませんでした。〈ゲラ〉というのは校正刷りのことで、校閲、編集者、そして著者が作品を確認するための試し刷りのことなのです。この出版社はゲラに値段をつけて売っているのだ……と暗い気持ちになりました。もちろん、その担当編集者がそういう人間だったということなのですが、このことは、岡嶋と角川の折り合いが悪くなるきっかけとなりました。