ダレカガナカニイル…

 
書下ろし作品

(週刊新潮に1990年2月1日号から9月27日号まで33回にわたって連載した『ふたりは一人』を原案として完全に違う小説として書き下ろしたものです)

 
発行:新潮社(新潮ミステリー倶楽部) 1992年1月20日
装幀:平野甲賀
定価:1,631円
ISBN-10: 4106027275
 
発行:新潮文庫 1995年2月1日
解説:大森望
装画:藤田新策
定価:860円
ISBN-10: 4101394113
 
発行:講談社文庫 2004年2月15日
解説:大森望
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装画:荒木慎司
定価:980円
ISBN-10: 4062739496

著者のつぶやき

 1990年2月から9月にかけて、『ふたりは一人』という作品を週刊新潮で連載しました。岡嶋二人のコンビを解消して4ヵ月ほど後のことです。
 井上夢人という筆名で小説を書くのは初めてのことで、気負ったあまり、かなり不本意な作品を書いてしまいました。連載を終えて、新潮の出版部からは単行本にする話をいただいていたのですが、書き直したいので少し待って下さいとお願いしました。ただ、どのように書き直せばいいのかがわかりません。やっぱり、一人じゃダメなんだろうかと悩むこと1年。さらに半年をかけて書き上げたものは、週刊誌連載とはまるで別の作品になっていました。全然違うので、担当は「両方出します?」などととぼけたことを言い出す始末でした。それが『ダレカガナカニイル…』です。
 出版した後で驚かされたのは、作品に登場する新興宗教団体とオウム真理教との類似を指摘されたことでした。オウムをモデルにしたとまで言われたのですが、『ダレカガナカニイル…』が出版されたのは1992年のはじめで、オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こし、日本中を震え上がらせたのは1995年だったのです。事件の詳細が伝えられ、オウムが山梨県に教団本部施設を置いて騒ぎを起こしていたことや、殺人行為を彼らは〈ポア〉と呼んで正当化していたと知って、僕は仰天しました。作品には〈解放の家〉という新興宗教を創出しました。その道場が山梨にあるという設定やら、意識を高次元に導く〈ポア〉というチベット密教の技法の存在など、共通点がポロポロと出てきたからです。
 結果、「オウムをモデルにした」という風評に、ある時期、僕はとんでもなく振り回されることになってしまったのでした。