the SIX  ザ・シックス

 
初出誌・小説すばる

「あした絵」2007年4月号
「鬼の声」2012年5月号
「空気剃刀」2012年8月号
「虫あそび」2013年1月号
「魔王の手」2013年5月号
「聖なる子」2013年7月号

 
出版社:集英社
発行: 2015年3月10日
装画:最上さちこ
装幀:大久保伸子
ISBN-10: 4087716023

著者インタビュー

──井上さんの新作『the SIX ザ・シックス』は連作短篇集のスタイルですが、最初からこういうスタイルにしようという構想があったのでしょうか。

いや、全く思っていませんでした。第一話(「あした絵」)だけ発表時期が離れていますが、あれは運転の練習をしようと思って書いた単発の作品だったんですよ(笑)。免許を取るのが五十歳を過ぎてからで、遅かったんです、僕。短篇の依頼が来て、ちょうどいいなと思って、甲府あたりまで車で流して、慣れるまで走り回ったんですよ。疲れると美術館の駐車場に車を置いて歩いた。公園だとか、川沿いの道とか、行った場所を全部入れた。車の練習ありきで書いたのが第一話なんです。しばらくしてから、あの続きで何かできないでしょうかと言われて考えたのが、この連作なんです。

──車の練習ありきで書かれた作品だったとは(笑)。

だから、第二話(「鬼の声」)以降は固有名詞の使い方が違ってるんですね。実在の地名や構造物が出てきているのは第一話だけじゃないかな。電車も本当に時刻表通りに来るのか待ってて、大丈夫だと確認して書きました。第二話以降はほとんどが作った地名なんです。

──登場する超能力者は、四歳の女児から高校生まで幅はありますが、未成年という点は共通していますね。

最初は超能力者を社会的弱者というくくりで描こうという考えがあったんです。子供、ハンディキャップを持った人たち、老人……とか考えてたんだけど、子供のほうが連作としてのつながりをはっきりと意識して読んでもらえるんじゃないかと気がついて、二話目を書くときに、全部子供の話にしようと決めました。それに、短篇だと長篇のようなディテールの書き込みができない。エピソードを積み上げて人物像を浮かび上がらせるようなことは、文字数的に無理です。その点子供の立場だと、差別されていたり、迫害を受けている状況をわりとダイレクトに出しやすく、書きたいことを小説としていい形で伝えられるという思いもありました。

 (「青春と読書」2015年3月号より抜粋)