Junkyard

 

2017/03/29
井上夢人 小説

『99人の最終電車』──稲葉不二夫

発想のきっかけとなるものは様々ですが、これはいかにも「拾いました」というネタが発端になっています。
 もちろん、拾ったものをどうやって形にするかが問題なのですが。

 
 
以前、幻聴に苦しんだ人が、その聞こえてくるものの正体に驚き魂消たという話を何かで読みました。幻聴の正体は歯の被せ物だったのです。
 虫歯を治療してもらい、銀歯にした直後から頭にノイズを感じるようになったのです。いろいろ調べてもらった結果、歯に被せた銀がラジオの電波を受信し、それが鼓膜に骨伝導で音を聞かせていたというものでした。

 ことの真偽はわかりません。本当かもしれないし、誰かがでっち上げた嘘っぱちかもしれません。

 でも、こういうネタで重要なのは「嘘っぽいけれど、もしかしたら本当かも……」という何かを含んでいることです。
 昔、鉱石ラジオというのが流行ったことがあります。電源を必要とせず、空中のラジオ電波を受信してその放送をイヤホンで聴くというものです。
 そんな鉱石ラジオがあるのだから、歯の詰め物がラジオを聴かせてくれてもいいんじゃないか……。

 これを嘘っぱちだという方向で小説化する方法と、奇妙だが本当だという方向へ小説化するやり方の両方があります。
 ここで僕が選択したのは後者でした。
 つまり、奥歯の詰め物がラジオを受信することはあり得るとして、それで一儲けを考えた奴らの話を考えることにしたのです。

 登場人物は3人いますが、その1人目──。

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