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2017/03/19
井上夢人 小説

『99人の最終電車』──兼田勝彦

《兼田勝彦》は一昨日、息子の和則を誘拐されました。
 犯人は、この銀座線渋谷行最終電車に、クーラーバッグに2千万円を入れて銀座まで持ってこいと命令したのです。

 
 
被害者の登場です。
 以前、岡嶋二人という名前の二人組で小説を書いていたころ、僕たちを「人攫いの岡嶋」と呼ぶ人たちがいました。その名をつけたのは当時集英社で岡嶋を担当していた山田裕樹さんだという話もあるようですが、定かではありません。

 誘拐モノの小説を岡嶋はいくつか書きました。
 そもそものきっかけは黒澤明監督作品『天国と地獄』だったのではないかと思います。(エド・マクベインの原作『キングの身代金』のほうではなく映画でした)

 井上夢人として一人で書き始めたころ、いろいろな人たちが僕と岡嶋を比較しました。最初のうち、僕はそれが厭で厭で仕方ありませんでした。
 で、「人攫いの岡嶋」をぶち壊してやろうと、この『99人の最終電車』で身代金の受け渡しを入れたのです。ところが書いていて気付いたのは、誘拐モノが、やっぱり僕は好きだということでした。自分でも意外でした。

 ということで《兼田勝彦》の最初のページはこちらです。